「社長一人で起業するなら、わざわざ法人化する必要があるのかな?個人事業主でも良いんじゃないかと思うけど、法人化のメリットをしっかり知りたい!」
社長一人で起業する場合、個人事業主として始めるか法人を設立するか悩まれる方は少なくありません。どちらにもメリット・デメリットがあるため、自分のビジネスにとってどちらが最適なのか判断するのは簡単ではないでしょう。
- 社長一人での法人化にどんなメリットがあるの?
- 個人事業主と法人ではどんな違いがあるの?
- 法人化するタイミングはいつがベスト?
そこで今回は、「社長一人で起業する際の法人化のメリット」について詳しくお伝えしていきます!
税金対策や社会保険、信用力アップなど様々な角度から法人化のメリットを解説するので、起業の形態で迷っている方はぜひ参考にしてみてください!
社長一人起業の法人化で得られる5つのメリット
まず、社長一人で起業する場合の法人化で得られるメリットについてご紹介していきます。個人事業主と比較して、法人にはどのような優位性があるのでしょうか。
法人化することで得られるメリットは主に以下の5つです。
- 税金面での優遇措置が受けられる
- 信用力・ブランド力が向上する
- 社会保険制度を活用できる
- 経費計上の幅が広がる
- 資金調達がしやすくなる
それでは、これらのメリットについて一つずつ詳しく見ていきましょう!
1. 税金面での優遇措置が受けられる
法人化の最大のメリットの一つは、税金面での優遇措置です。個人事業主の場合、所得が増えるにつれて累進課税により最大55%もの税率が適用されることがあります。
一方、法人の場合は法人税率が一律で適用されるため、所得が多くなるほど税負担が軽減される可能性が高いのです。具体的には、資本金1億円以下の中小企業であれば、年間所得800万円以下の部分については15%の軽減税率が適用されます。
また、法人であれば役員報酬を経費として計上できるため、適切に設定することで節税効果を高めることが可能です。例えば、自分への役員報酬を調整することで、法人と個人の税負担を最適化できるでしょう。
さらに、法人には様々な税制優遇措置が用意されています。中小企業向けの税額控除や、設備投資に対する特別償却制度なども活用できるため、戦略的な税務計画を立てることが可能になるのです。
このように、一定の所得を超えると、個人事業主よりも法人の方が税金面で有利になることが多いでしょう。ただし、法人の場合は設立費用や維持費用もかかるため、収益規模に合わせた判断が必要です。
2. 信用力・ブランド力が向上する
社長一人でも法人化することで、取引先や顧客からの信頼度が格段に高まります。なぜなら、法人は個人と比べて社会的な信用力が高く評価されるからです。
実際、大手企業との取引では「法人であること」が取引条件となっているケースも少なくありません。個人事業主では門前払いされる商談でも、法人であれば検討してもらえる可能性が高まるでしょう。
また、株式会社などの法人格を持つことで、自社のブランディングに好影響を与えます。名刺やホームページに「株式会社」の文字があるだけで、事業の継続性や安定性をアピールできるのです。
さらに、求人活動においても法人であることは大きなアドバンテージとなります。優秀な人材の獲得競争において、法人としての安定感や将来性は魅力的な要素となるでしょう。
このように、社長一人でも法人化することで対外的な信用力やブランド力が向上し、ビジネスチャンスの拡大につながっていくのです。
3. 社会保険制度を活用できる
法人化することで、社長自身が社会保険に加入できるようになります。これは個人事業主では得られない大きなメリットの一つと言えるでしょう。
個人事業主の場合、国民健康保険や国民年金に加入することになりますが、法人の役員であれば厚生年金保険や健康保険に加入することができます。厚生年金は国民年金よりも将来の年金受給額が多くなる傾向があるため、老後の生活設計において有利になるのです。
また、健康保険では傷病手当金や出産手当金といった制度を利用できるため、万が一の際のセーフティネットとしても機能します。特に、長期の療養が必要になった場合には大きな支えとなるでしょう。
さらに、雇用保険に加入することで、経営が困難になった場合でも失業給付を受け取れる可能性があります。このように、社会保険制度を活用することで、個人のリスクヘッジが強化されるのです。
もちろん、社会保険料は会社と個人で折半するため、コスト面では負担が増える部分もあります。しかし、長期的な視点で見れば、充実した社会保障を得られることは大きなメリットと言えるでしょう。
4. 経費計上の幅が広がる
法人化することで、個人事業主と比べて経費として認められる範囲が広がります。これにより、実質的な税負担を軽減することが可能になるのです。
例えば、個人事業主では認められにくい交際費や福利厚生費も、法人であれば一定の範囲内で経費計上できます。接待や会食、社員旅行なども事業に関連するものであれば、経費として認められる可能性が高まるでしょう。
また、自家用車を法人名義にすることで、車両の購入費やガソリン代、車検費用などを経費として計上しやすくなります。個人事業主では按分計算が必要なケースでも、法人であれば全額経費にできる場合があるのです。
さらに、家賃や光熱費なども、事務所として使用している部分については経費として計上できます。これにより、事業に関連する様々な支出を効率的に管理できるようになるでしょう。
このように、法人化することで経費の幅が広がり、税務上のメリットを最大化することが可能になります。ただし、経費計上には適切な根拠やルールがあるため、税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
5. 資金調達がしやすくなる
社長一人の会社でも、法人化することで様々な資金調達手段が利用できるようになります。これは事業拡大を考える上で非常に重要なポイントです。
個人事業主の場合、融資を受ける際は個人の信用力に頼ることが多く、調達できる金額にも限界があります。一方、法人であれば様々な融資制度や補助金を活用できる可能性が高まるのです。
例えば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や自治体の創業支援融資などは、法人が利用しやすい制度となっています。また、中小企業向けの様々な補助金やビジネスコンテストなども、法人であることが応募条件となっているケースが多いでしょう。
さらに、将来的に事業を拡大する際には、株式を発行して投資家から資金を調達することも可能になります。ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家は、成長性のある法人に投資する傾向が強いため、法人格を持つことは大きなアドバンテージとなるのです。
このように、法人化することで資金調達の選択肢が広がり、事業の成長スピードを加速させることができるでしょう。
個人事業主と法人の違い:どっちがいい?
続いては、個人事業主と法人の主な違いについて解説していきます。それぞれの特徴を理解することで、自分のビジネスにとってどちらが適しているのか判断する材料になるでしょう。
個人事業主と法人には、設立の手続きや税金、責任の範囲など様々な違いがあります。以下の観点から比較していきましょう。
設立手続きと費用の違い
まず、設立手続きと費用の面では個人事業主の方がシンプルです。個人事業主の場合、開業届を税務署に提出するだけで開業できます。費用もほとんどかからないため、気軽に始められるのが大きな特徴です。
一方、法人を設立する場合は、定款の作成や公証人による認証、法務局への登記申請などの手続きが必要になります。株式会社の場合、最低でも20万円程度の費用がかかるでしょう。また、設立後も決算書の作成や法人税の申告など、各種の手続きが発生します。
このように、手続きの簡便さや初期コストを重視するなら個人事業主、将来的な成長や信用力を重視するなら法人が適していると言えるでしょう。特に資金に余裕がない創業初期は個人事業主からスタートし、事業が軌道に乗ってから法人化するというステップも一般的です。
税金と社会保険の違い
税金面では、収入規模によって有利な形態が変わってきます。年間の利益が300万円を超えると、個人事業主よりも法人の方が税金面で有利になる傾向があります。
また、社会保険についても大きな違いがあります。個人事業主は国民健康保険と国民年金に加入しますが、法人の役員は健康保険と厚生年金に加入することになります。保険料は上がりますが、将来受け取る年金額も増える可能性が高いのです。
さらに、個人事業主の場合は事業用の資産と個人の資産が明確に分かれていないため、税務上の管理が複雑になることがあります。法人であれば、事業と個人の資産が明確に区別されるため、経理処理が整理しやすくなるでしょう。
このように、長期的な視点で考えると、ある程度の収益規模がある場合は法人化によるメリットが大きくなる傾向があります。
責任の範囲と事業継続性の違い
個人事業主の場合、事業で発生した負債やトラブルに対して、個人の財産を含めた無限責任を負います。つまり、事業に失敗した場合、個人の財産までもが返済の対象となる可能性があるのです。
一方、株式会社などの法人の場合は、原則として会社の財産の範囲内で責任を負う有限責任となります。これにより、事業がうまくいかなくなった場合でも、個人の財産が守られる可能性が高まるのです。
また、事業の継続性という観点でも違いがあります。個人事業主の場合、経営者が病気や事故で働けなくなると、事業の継続が難しくなります。法人であれば、経営者が交代しても法人格は存続するため、事業の継続性が高まるでしょう。
将来的に事業を拡大したり、従業員を雇用したりする予定がある場合は、法人化することでリスクを軽減しながら成長できる環境を整えることができます。
社長一人起業の法人化タイミング:いつするべき?
それでは、社長一人で起業する場合、いつ法人化するのがベストなのでしょうか。法人化のタイミングについて解説していきます。
法人化は一度すると元に戻すのが難しいため、適切なタイミングを見極めることが重要です。以下のような状況になったら、法人化を検討する良いタイミングかもしれません。
年間利益が300万円を超えてきたとき
一つの目安として、年間の利益が300万円を超えてきたときは法人化を検討するタイミングと言えるでしょう。なぜなら、このくらいの収益規模になると、個人事業主よりも法人の方が税金面で有利になる可能性が高まるからです。
個人事業主の場合、所得税は累進課税制度のため、収入が増えるにつれて税率も上がります。一方、法人税は一定の税率が適用されるため、ある程度の収益があれば法人化によるメリットが大きくなるのです。
もちろん、個人の状況によって最適な判断は異なります。そのため、収益が300万円に近づいてきたら、税理士などの専門家に相談して、自分のケースではどちらが有利なのか試算してもらうと良いでしょう。
取引先や顧客からの信用力が必要になったとき
ビジネスの拡大に伴い、大手企業との取引や大型案件の受注を目指す場合は、法人化を検討するタイミングかもしれません。先ほども触れたように、法人であることが取引条件となっているケースも少なくないからです。
特に、B to B(企業間取引)のビジネスモデルでは、法人格の有無が取引の可否を左右することがあります。個人事業主では通過できない審査も、法人化することでクリアできる可能性が高まるでしょう。
また、金融機関からの融資や公的な補助金を活用したい場合も、法人の方が有利なケースが多いです。事業拡大のために資金調達が必要になってきたら、法人化のタイミングと考えられるでしょう。
従業員を雇用する予定があるとき
現在は社長一人でも、将来的に従業員を雇用する予定がある場合は、法人化を検討するタイミングです。法人であれば、雇用保険や社会保険の制度を適切に活用できるからです。
また、従業員を雇用する際のリスク管理という観点でも、法人化はメリットがあります。万が一、従業員とのトラブルが発生した場合も、個人ではなく法人として対応できるため、経営者のリスクを軽減できるのです。
さらに、採用活動の際にも、個人事業主よりも法人の方が応募者からの信頼を得やすい傾向があります。優秀な人材を確保するためにも、法人格を持つことは大きなアドバンテージとなるでしょう。
事業の継続性・安定性を高めたいとき
長期的に事業を継続し、安定させたいと考えるなら、法人化を検討する価値があります。個人事業主の場合、事業主の病気や事故などで事業継続が困難になるリスクがあるからです。
法人であれば、経営者が交代しても法人格は存続します。また、事業承継を考える場合も、個人事業よりも法人の方がスムーズに進めやすいでしょう。
さらに、将来的に事業を売却する可能性がある場合も、法人化しておくことでM&A(合併・買収)がしやすくなります。事業の価値を高め、将来の選択肢を広げるためにも、法人化は有効な手段と言えるでしょう。
社長一人起業で法人化する際の注意点
法人化にはメリットがある一方で、注意すべきポイントもあります。ここでは、社長一人で法人化する際に気をつけるべき点について解説していきます。
法人化を検討する際は、以下の点に特に注意しましょう。
設立・維持コストがかかる
法人を設立する際は、定款の作成や登記申請などの手続きが必要となり、株式会社の場合は最低でも20万円程度の費用がかかります。また、設立後も法人を維持するためのコストが発生します。
例えば、毎年の決算書作成や法人税の申告のために、税理士に依頼する費用が必要になるでしょう。また、法人住民税は収益がなくても最低5万円程度の均等割が課税されます。
さらに、株式会社であれば株主総会の開催や議事録の作成なども必要です。これらの手続きは個人事業主にはない負担となるため、コスト面をしっかり考慮することが重要です。
法人化する際は、これらの維持コストを上回るメリットが得られるかどうかを慎重に判断しましょう。
事務手続きが増える
法人になると、様々な事務手続きが増加します。例えば、毎年の決算書の作成や法人税の申告、株主総会の開催などが必要になります。
また、法人として従業員を雇用する場合は、社会保険の手続きや労働保険の申告なども発生します。個人事業主と比べて、行政への届出や報告事項が大幅に増えるのです。
これらの手続きを自分で行うには専門知識が必要になるため、税理士や社会保険労務士などの専門家に依頼することが一般的です。もちろん、その分のコストも考慮する必要があるでしょう。
事務手続きの増加に対応できる体制を整えることも、法人化を検討する際の重要なポイントです。
役員報酬の設定に注意が必要
法人の場合、経営者自身の給料は「役員報酬」として支払われます。この役員報酬は、一度設定すると原則として年度の途中で変更することができません。
そのため、役員報酬の金額設定には慎重な検討が必要です。高すぎると法人の利益が減り、低すぎると生活に支障が出る可能性があります。適切なバランスを取ることが重要になるでしょう。
また、役員報酬は定期同額給与として毎月同じ金額を支払うのが原則です。業績に応じて変動させるには、事前に定めた規定に基づいて支給する必要があります。
役員報酬の設定は税務上も重要なポイントとなるため、税理士などの専門家にアドバイスを受けながら決定することをおすすめします。
赤字でも税金がかかることがある
個人事業主の場合、赤字であれば所得税はかかりません。しかし、法人の場合は赤字でも法人住民税の均等割(年間約5万円)が課税されます。
また、消費税についても、個人事業主と法人では課税のタイミングが異なります。法人は設立2期目から消費税の課税対象となる可能性があるため、資金計画には注意が必要です。
さらに、役員報酬を支払っている場合、会社としては赤字でも経営者個人には所得税がかかります。これらの税金負担を考慮した上で、資金繰りを計画することが重要です。
赤字経営が続く場合は、法人のメリットを活かしきれず、むしろコスト増につながる可能性もあるため、事業の収益性をしっかり見極めることが大切です。
まとめ:社長一人起業の法人化はメリットを見極めて判断しよう
今回は、社長一人で起業する際の法人化のメリットについて詳しく解説してきました。法人化には税金面での優遇措置や信用力の向上、社会保険制度の活用など、様々なメリットがあることがわかりました。
一方で、設立・維持コストがかかることや事務手続きが増えることなど、デメリットも存在します。そのため、自分のビジネスの状況や将来の展望に合わせて、法人化のタイミングを見極めることが重要です。
一般的には、年間利益が300万円を超えてきたときや、取引先からの信用力が必要になったとき、従業員を雇用する予定があるときなどが、法人化を検討するタイミングと言えるでしょう。
法人化は一度行うと個人事業主に戻すのは容易ではないため、十分な情報収集と専門家への相談を行った上で判断することをおすすめします。本記事が、社長一人での起業を考えている方や、個人事業主から法人化を検討している方の参考になれば幸いです!
最後に、法人化の判断は事業の状況によって異なるため、税理士や中小企業診断士などの専門家に相談しながら進めることで、より適切な判断ができるでしょう。自分のビジネスにとって最適な選択をして、事業の成長につなげていってください!