「毎日のストレスで心が疲れきってしまった……」「自分の気持ちをどこにも出せなくて苦しい」
そんな心の重たさを感じている方も多いのではないでしょうか。
現代社会では人間関係や仕事のプレッシャー、家事・育児などで、知らず知らずのうちに心にストレスが溜まってしまいがちです。
この記事では、心をやさしくほぐしてくれるアートセラピーの始め方について詳しくお話ししていきます。
絵が苦手な方でも気軽に取り組める方法から、科学的に証明された効果まで、あなたの心を癒すためのヒントがきっと見つかるはずです!
アートセラピーとは?ストレスをやわらげる癒しの手段
アートセラピーとは、絵を描いたり、色を塗ったり、何かを作ったりする表現活動を通じて心の健康をサポートする療法のことです。
言葉で表現するのが難しい感情や思いを、アートという形で外に出すことで、心のバランスを整えていく効果が期待できます。
アートセラピーの基本的な意味と起源
アートセラピーは、芸術活動を通して心理的な問題や感情の整理を図る治療法として発展してきました。
その歴史は1940年代のアメリカにまで遡ります。
当時、戦争で心に傷を負った兵士たちの治療に絵画療法が使われたのが始まりとされています。
その後、医療現場や教育現場で広く活用されるようになり、現在では世界中で実践されている心理療法の一つなのです。
ストレスとの関係|感情を表現することで心が整う理由
私たちは日常生活の中で、怒りや悲しみ、不安といった様々な感情を抱えています。
しかし、これらの感情を適切に表現する機会がないと、心の中に溜め込んでしまいがちです。
アートセラピーでは、色や形、線を使って内面の感情を表現することで、心の中のモヤモヤを外に出せます。
たとえば、イライラしているときに赤い色で力強く線を描いたり、悲しいときに青い色で静かな模様を描いたりすることで、言葉にできない気持ちを解放できるのです。
また、創作活動に集中することで、一時的にストレスから離れられる効果も期待できます。
カウンセリングとの違いとは?
カウンセリングは主に言葉を使って心の問題と向き合う方法です。
一方、アートセラピーは言葉ではなく、創作活動を通して心の内面と向き合っていきます。
そのため、「自分の気持ちを言葉で説明するのが苦手」という方や、「頭で考えすぎてしまう」という方には特におすすめの方法といえるでしょう。
さらに、アートセラピーは専門的な知識がなくても自分で始められるため、気軽に取り組めるという魅力もあります。
絵が苦手でも大丈夫!誰でもできるアートセラピーの始め方
「アートセラピーに興味はあるけれど、絵が下手だから無理かも……」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
でも安心してください。アートセラピーでは、上手に描くことが目的ではありません。
大切なのは、自分の気持ちを自由に表現することなのです。
描くだけじゃない!自由な表現方法の種類
アートセラピーというと絵を描くイメージが強いかもしれませんが、実際には様々な表現方法があります。
たとえば、雑誌から気になる写真を切り取って貼り合わせるコラージュや、粘土で好きな形を作る造形活動なども立派なアートセラピーです。
また、色鉛筆で塗り絵をしたり、折り紙で何かを作ったり、さらには文字を書くことだって表現活動の一つといえます。
つまり、あなたが「楽しい」「心地いい」と感じる創作活動であれば、どんなものでもアートセラピーになり得るのです。
初心者向けおすすめ手法3選(塗り絵・コラージュ・線画)
アートセラピー初心者の方には、特に取り組みやすい3つの手法をおすすめします。
まず一つ目は塗り絵です。すでに線で描かれた絵に色を塗っていくだけなので、「絵が苦手」という方でも気軽に始められます。
色を選ぶとき、塗っているときに感じる気持ちを大切にしてみてください。
二つ目はコラージュです。雑誌やチラシから気になる写真や文字を切り取って、一枚の紙に自由に貼り付けていきます。
「なぜこの写真を選んだのか」「どんな気持ちで配置したのか」を意識しながら作業すると、自分の内面に気づきやすくなります。
三つ目は線画です。何も考えずに、思うままに線を描いてみてください。
ぐるぐると円を描いたり、ジグザグの線を引いたり、自分の手の動きに任せて自由に表現していきましょう。
上手に描く必要はない理由
アートセラピーにおいて、技術的な上手さは全く重要ではありません。
なぜなら、目的は「美しい作品を作ること」ではなく「自分の心と向き合うこと」だからです。
むしろ、「上手に描かなければ」と考えすぎると、本来の目的から離れてしまう可能性もあります。
大切なのは、作品を通して自分がどんな気持ちになったか、何を感じたかということなのです。
たとえ他の人から見て「下手な絵」だったとしても、あなたがその作品を作ることで心が軽くなったり、新しい発見があったりすれば、それは十分に価値のあるアートセラピーといえるでしょう。
科学的にも証明済み?アートセラピーがストレスに効く理由
アートセラピーの効果は、単なる気分転換や趣味の範囲を超えて、科学的にも証明されています。
近年の研究では、創作活動が私たちの脳や体に与える具体的な影響が明らかになってきました。
ここでは、なぜアートセラピーがストレス軽減に効果的なのか、その仕組みについて詳しくお伝えしていきます。
コルチゾールが減る?研究でわかった効果
2016年にアメリカで行われた研究では、45分間のアート制作後に参加者の唾液を調べたところ、ストレスホルモンであるコルチゾールの値が大幅に減少していたことが分かりました。
コルチゾールは、ストレスを感じたときに分泌されるホルモンで、長期間高い状態が続くと免疫力の低下や睡眠障害などの原因となります。
つまり、アート制作によってこのストレスホルモンが減ることで、体全体のストレス反応が和らぐということです。
また、同じ研究では参加者の約75%が「リラックスできた」と回答し、創作活動中は時間を忘れて集中できたという声も多く聞かれました。
脳と色彩の関係|視覚からの癒しメカニズム
色彩心理学の分野では、色が人間の心理に与える影響について多くの研究が行われています。
たとえば、青色には心拍数を下げて気持ちを落ち着かせる効果があり、緑色には疲労回復やリラックス効果があることが知られています。
一方、赤色には気分を高揚させる作用があり、黄色には明るい気持ちにさせる効果があるとされています。
アートセラピーでは、こうした色の持つ力を無意識のうちに活用していることになります。
たとえば、ストレスを感じているときに青や緑を多用した作品を作ると、自然と心が落ち着いてくるというわけです。
また、創作活動中に様々な色を見ることで、脳の視覚野が刺激され、普段使わない神経経路が活性化されることも分かっています。
医療現場や福祉でも導入されている理由
現在、アートセラピーは病院や介護施設、学校などの様々な現場で活用されています。
たとえば、がん患者さんの治療中の不安軽減や、認知症の方の脳機能維持、うつ病患者さんの回復支援などに効果が認められています。
また、東日本大震災後には被災者の心のケアにもアートセラピーが取り入れられ、トラウマの軽減に一定の効果があったという報告もあります。
このように医療や福祉の専門分野で導入されているのは、アートセラピーの効果が科学的に裏付けられているからに他なりません。
さらに、薬物療法と違って副作用がほとんどないことも、多くの現場で選ばれる理由の一つといえるでしょう。
アートセラピーを試した人のリアルな声【体験談】
実際にアートセラピーを体験した方々は、どのような変化を感じているのでしょうか。
ここでは、異なる立場の3人の体験談をご紹介していきます。
それぞれの方が感じた効果や気づきは、あなたがアートセラピーを始める際の参考になるはずです。
子育てママのケース|「怒りっぽさが減った」
3歳と6歳のお子さんを育てるAさん(32歳)は、子育てのストレスで毎日イライラしていました。
「子どもたちに怒ってばかりいる自分が嫌で、どうにかしたいと思っていたんです」とAさんは当時の心境を振り返ります。
そんなとき、友人からアートセラピーのことを聞き、子どもたちが寝た後の30分間、塗り絵を始めてみることにしました。
最初は「こんなことで変わるのかな」と半信半疑だったそうですが、1週間続けてみると明らかな変化を感じたといいます。
「色を塗っている間は無心になれて、その日のモヤモヤが整理される感じがしました。翌朝は気持ちがスッキリしていて、子どもたちにも優しく接することができるようになったんです」
現在もAさんは週に3〜4回、短時間でもアート制作の時間を作るようにしているそうです。
「完璧な母親にならなくてもいいんだということに気づけました。自分の時間を大切にすることで、結果的に家族みんなが笑顔でいられるようになりました」
働く女性のケース|「自分の時間を取り戻せた」
営業職として働くBさん(28歳)は、人間関係のストレスと長時間労働で心身ともに疲れ切っていました。
「仕事のことばかり考えてしまって、休日でもリラックスできない状態が続いていました」
そんなBさんがアートセラピーと出会ったのは、会社の福利厚生で受けたストレスチェックがきっかけでした。
産業医から「何か自分なりのストレス発散方法を見つけた方がいい」とアドバイスを受け、インターネットで調べてアートセラピーに辿り着いたのです。
「最初はコラージュから始めました。雑誌を切り抜いて貼るだけの簡単な作業でしたが、集中しているうちに仕事のことを忘れることができたんです」
Bさんは毎週末に2時間程度、自分だけのアート時間を作るようになりました。
「作品を作っているときは、本当に自分の時間という感じがします。誰にも邪魔されず、自分の好きなように表現できる貴重な時間になりました」
半年続けた結果、職場でのストレス耐性も向上し、以前ほど人間関係で悩むことがなくなったそうです。
介護をする人のケース|「誰にも言えない気持ちを出せた」
認知症のお母様を自宅で介護しているCさん(45歳)は、介護の負担と将来への不安で精神的に追い詰められていました。
「介護は大変だけど、それを愚痴として口に出すのは申し訳ない気持ちがあって、一人で抱え込んでいました」
地域の介護者支援プログラムでアートセラピーのワークショップが開催されることを知り、半ば気分転換のつもりで参加してみたそうです。
「最初に『自分の今の気持ちを色で表現してみてください』と言われて、無意識に暗い色ばかり選んでいる自分に驚きました」
Cさんは粘土を使った造形から始め、徐々に絵画にも挑戦するようになりました。
作品を作る中で、これまで言葉にできなかった複雑な感情と向き合うことができたといいます。
「母への愛情と同時に、疲れや不安も感じていることを認められるようになりました。そうしたら気持ちが楽になって、介護にも前向きに取り組めるようになったんです」
現在Cさんは月に2回、同じような立場の方々とアートセラピーのグループ活動に参加しています。
「言葉では表現しきれない気持ちを、作品を通して分かち合える仲間ができたことも大きな支えになっています」
必要な道具は?100均や家にあるもので始めるアートセラピー
「アートセラピーを始めてみたいけれど、特別な道具や材料が必要なのでは?」と心配している方も多いかもしれません。
実は、アートセラピーは身近にあるものや100円ショップで購入できる材料だけでも十分に始められます。
ここでは、気軽にスタートできる道具選びのコツをお伝えしていきます。
基本セット|まずはこれだけあればOK
アートセラピーを始めるために最低限必要なのは、紙と描く道具だけです。
紙はコピー用紙やスケッチブック、チラシの裏など、どんなものでも構いません。
描く道具も、鉛筆、色鉛筆、クレヨン、マーカーなど、家にあるもので十分対応できます。
さらに、雑誌やカタログがあればコラージュもできますし、折り紙や包装紙があれば立体的な作品作りにも挑戦できるでしょう。
つまり、「今すぐ始めたい」と思ったら、特別に何かを買い揃える必要はないのです。
大切なのは道具の質や種類ではなく、「作ってみよう」という気持ちなのです。
100均でそろうおすすめアイテム
もう少し本格的に取り組みたい方には、100円ショップでの道具調達をおすすめします。
まず、スケッチブックやクロッキー帳があると、作品をまとめて保管できて便利です。
色鉛筆セットやクレヨンセット、水性マーカーなども100円で購入できるため、様々な表現を試してみることができます。
また、のりやはさみ、カッターがあればコラージュ作品の幅が広がりますし、粘土があれば立体的な表現も楽しめるでしょう。
さらに、パステルやオイルパステルなども100円ショップで手に入るため、より本格的な絵画表現にも挑戦できます。
これらを全て揃えても1000円程度で済むため、「まずは試してみたい」という方にはぴったりです。
身の回りのもので代用するコツ
創作活動では、身の回りにあるものを工夫して使うことで、思いがけない表現が生まれることもあります。
たとえば、コーヒーフィルターに水性マーカーで色をつけて水に浸すと、美しいにじみ模様ができあがります。
また、野菜や果物を半分に切ってスタンプとして使ったり、綿棒を筆代わりにして細かい模様を描いたりすることも可能です。
新聞紙や雑誌は、コラージュの材料としてはもちろん、絵の具を混ぜるパレット代わりにも使えます。
さらに、ティッシュペーパーやキッチンペーパーを使えば、水彩画でのぼかし技法なども楽しめるでしょう。
このように、「これは何かの材料になるかな?」という視点で身の回りを見渡してみると、意外なアート材料がたくさん見つかるはずです。
創意工夫も立派なアートセラピーの一部といえるのです。
もっと深く学びたい人へ|アートセラピーを体験できる講座・教室の探し方
一人でアートセラピーを続けてみて、「もっと本格的に学んでみたい」「他の人とも一緒に体験してみたい」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
そんなときは、専門的な講座や教室に参加してみることをおすすめします。
ここでは、自分に合った学習方法の見つけ方についてお話ししていきます。
オンライン講座のメリット・デメリット
最近では、インターネットを通じてアートセラピーを学べるオンライン講座も増えています。
オンライン講座の最大のメリットは、自宅にいながら学習できることです。
特に小さなお子さんがいる方や、近くに教室がない地域にお住まいの方には非常に便利な選択肢といえるでしょう。
また、録画された講座であれば自分の都合の良い時間に受講でき、何度でも見返すことができるのも魅力の一つです。
一方で、デメリットとしては実際に指導者から直接アドバイスを受けにくいことや、他の参加者との交流が限られることが挙げられます。
さらに、実技指導の細かいニュアンスが伝わりにくい場合もあるため、基礎的な知識を学ぶ段階では有効ですが、より高度な技術を身につけたい場合には物足りなさを感じるかもしれません。
対面教室を選ぶときのチェックポイント
対面での教室やワークショップに参加する場合、事前に確認しておきたいポイントがいくつかあります。
まず、指導者の資格や経験について調べてみることが大切です。
アートセラピストの資格を持っているか、臨床経験はどの程度あるかなどを確認しておくと安心でしょう。
また、教室の雰囲気も重要な要素です。
体験レッスンがあるようであれば、まずは一度参加してみて、自分に合う環境かどうかを判断してみることをおすすめします。
さらに、少人数制か大人数制かによっても学習効果は変わってきます。
個別指導を重視したい方は少人数制を、様々な人の作品や体験談を聞きたい方は大人数制を選ぶとよいでしょう。
費用についても事前にしっかりと確認し、継続して通える範囲内かどうかを検討することも忘れずに。
資格取得や仕事に活かしたい人向けの選び方
将来的にアートセラピストとして活動したい方や、現在の仕事に活かしたいと考えている方は、より専門的なプログラムを選ぶ必要があります。
日本では複数の団体がアートセラピスト認定資格を発行しているため、どの資格を目指すかをまず決めることが大切です。
それぞれの団体によって、カリキュラムの内容や受講期間、費用が異なるため、自分の目標や生活スタイルに合ったものを選びましょう。
また、実習やインターンシップの機会があるかどうかも重要なチェックポイントです。
理論だけでなく実際の現場経験を積めるプログラムを選ぶことで、より実践的なスキルを身につけることができます。
さらに、卒業後のサポート体制についても確認しておくことをおすすめします。
就職支援や開業サポート、継続教育の機会などがあるかどうかによって、その後のキャリア形成に大きな差が生まれる可能性もあるのです。
まとめ
アートセラピーは、絵が苦手な方でも気軽に始められる心のケア方法です。
塗り絵やコラージュ、線画など、身近な材料を使って自分の感情を表現することで、ストレスホルモンの減少や心の整理といった科学的に証明された効果を得ることができます。
大切なのは上手に描くことではなく、創作活動を通じて自分の心と向き合うことです。
100円ショップの材料や家にあるものだけでも十分に始められるため、思い立ったその日からスタートできるのも魅力の一つでしょう。
もしも毎日のストレスで心が疲れているなら、まずは15分だけでも自分のための創作時間を作ってみることをおすすめします。
きっとあなたの心を優しくほぐし、新しい気づきをもたらしてくれるはずです!